「・・・ねぇ悟浄。」
「んぁ?」
「突然理由も無く・・・泣いたり、辛くなったりする時って・・・・・・ある?」
今の自分がそうだから、小首を傾げて悟浄に尋ねてみた。
「ひょっとしてチャン、今・・・そんなカンジ?」
「・・・んー、そうかも。」
悟浄に嘘をつくと余計に心配をかけてしまうから・・・
あたしはいつも、悟浄の前では誰よりも素直な女の子になれる。
テレビを見ていた悟浄がスイッチを消して立ち上がると、ソファーに座ってクッションを抱えていたあたしの前にしゃがみ込んで顔を覗き込んだ。
まっすぐあたしを見つめる悟浄の視線は、あたし自身が気付いていない小さな傷すらも見透かしてしまいそうなほどまっすぐで・・・苦笑しながら悟浄から視線を外した。
「こーら、余所見すんな。」
「だって・・・悟浄がじーっと顔見るから・・・」
「いいだろ?別に。」
そう言ってあたしの頬に両手を添えるともう一度さっきと同じように視線を合わせた。
やがて悟浄が小さくため息をついてから頬に添えていた手を外して、髪をかきあげながらあたしの目の前に人差し指を立てた。それに驚いていると、悟浄は更にあたしを驚かせる台詞を続けた。
「いろんな事ありすぎて・・・頭がパンクしそうってカンジ?」
「!?」
「んで胸が苦しくって、物が食えない・・・違うか?」
「・・・あ、当たり。」
何でそんな事分かるんだ?って顔をしていたら、突然悟浄の手があたしの後頭部に回されてそのままぐいっと抱き寄せられた。
「チャンの考えてるコトなんか、すーぐ・・・分かるって。」
「悟浄・・・」
「一人でナンでも抱え込んでんじゃねェよ・・・いじけちゃうゼ?」
わざと明るめな声で喋っているけど、あたしを抱きしめてる腕は・・・力強い。
崩れ落ちそうになっているあたしの体を受け止めるように一度抱き上げて悟浄がソファーに座り直す・・・と、まるで全てを悟浄に預けるかのように膝の上に横抱きにされていた。
そして耳元に囁かれた悟浄の声を聞いて・・・あたしの冷えた心は一気に溶け出してしまった。
「・・・泣いちまえ、全部オレが受け止めてやる。」
冷えた心が溶け出して、自然と頬を涙がつたえばそれを悟浄が指で拭ってくれる。
「――― んで、辛いモン・・・ぜ〜んぶ吐き出したら・・・」
「・・・・・・」
「また ――― 笑ってくれ。」
意味もなく疲れた時、人が望むモノ
それは言葉だったり、助けてくれる手だったり・・・それぞれだけど
本当に疲れた時に欲しいのは・・・大好きな人の、腕
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